わたしのもとに来て、自分の父、母、妻、子、兄弟、姉妹、そのうえ自分のいのちまでも憎まない者は、わたしの弟子になることができません。
ルカの福音書 14:26
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前回は神の国での食卓の話から、謙遜と傲慢について考えた。
そして、今回はその続き。内容は前回にも増して難解である。
文字通り受け取るのか、比喩として読み取るのか、はたまた隠された真意があるのか、そして、現代に生きる私たちはどう適用したらいいのか、少し考えてみたい。
まず、文字通り読んでみる。すると、イエスに従うには親兄弟を憎まねばならない、と読める。
ルカの福音書の他の箇所でも、こんなやりとりがある。
イエスは別の人に、こう言われた。「わたしについて来なさい」しかしその人は言った。「まず行って、私の父を葬ることを許してください」 すると彼に言われた。「死人たちに彼らの中の死人たちを葬らせなさい。あなたは出て行って、神の国を言い広めなさい」
このように、家族との関わりに厳しく言及されるイエスの言葉が出てくる。
一方、有名な十戒には「あなたの父と母を敬いなさい」とある。
聖書は矛盾することを言っているのだろうか。
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聖書には、父として、母として、子として、それぞれどう振る舞うべきか書いてあるし、家族のあり方について触れているところもある。
しかし、ここでは、シンプルに真理に到達したいので、十戒の教えに立ち返ることにする。
十戒の前半を取り上げてみる。
第1戒 あなたはわたし以外に、ほかの神があってはならない。
第2戒 あなたは自分のために、偶像を造ってはならない。
第3戒 あなたは、あなたの神、主の名を、みだりに口にしてはならない。
第4戒 安息日を覚えて、これを聖なるものとせよ。
第5戒 あなたの父と母を敬え。
こうして順に見てみると、第1から4までは、私と神さまとの関係にフォーカスしていることが分かる。そして、その次に、父と母を敬いなさいとある。
そう、神さまとの関係がまずあって、それから親との関係であることが明らかにされている。
この順、優先順位こそ今回の疑問を解くカギである。
◯◯ファーストという表現が巷を騒がして久しい。私たちクリスチャンは、迷うことなくここに「神さま」を当てはめる。
何はともあれ神を一番に置く。GOD FIRST、これ以上の価値はない。
神か家族かの二者択一ではなく、神も家族も大切、でも優先順位がある、ということだ。
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イエスはこの価値を植え付けるために、あえてこのようなみことばを発したのだろう。
真理に至る道はただ1つ、神に従い生きることである。
神に従い生きることを第一に考えるならば、必然的に家族を愛し敬うことになるだろう。
賢者ソロモン王が記した箴言の冒頭にも「わが子よ、父の諭しに聞き従え。母の教えを疎かにするな」とある。
ソロモンは、何でも欲しいものを手に入れることができる、So what do you want? と神に尋ねられ、地位や名誉や財産ではなく、知恵と答え、神に喜ばれた王だ。
そのソロモンが、神を畏れることが知恵の始まりであると断言している。
今日のみことばは、家族や自分のいのちを捨てて神に従うことを勧めているのではない。そうではなくて、神に従うことなしに家族や自分のいのちを大切にすることはできないと言っているのだ。
最後に、このソロモンの言葉を読んで、余韻に浸ろう。
「わたしに聞き従う人は確かな住まいを得、災難を恐れることなく平穏に暮らす」